「ボッチプレイヤーの冒険 〜最強みたいだけど、意味無いよなぁ〜」
第56話
領主の館訪問編
<甘すぎる持て成し>
この辺り周辺を治める領主であるカロッサ子爵の館。その1階の一番隅にあり、二面の壁の窓から子爵邸の庭を楽しむ事ができる客間にアルフィンたちは通されていた。
「急遽用意したにしては、隅々まで意識が行き届いたいい部屋ね」
アルフィンは領主の錯乱により、急遽誂えたであろう控えの間を見渡してそう思った。ユグドラシル時代、ゲームの中でとは言えお客様にお待ちいただく控えの間と言うものは結構気を使うものだった。なぜなら待ち人がそろってその会が始まってしまえばお互いの会話やNPCたちのショーに気が行って内装や家具、調度品に目を向ける者は居なくなるが、控えの間となるとそうは行かない。少なくとも暇を持て余すであろう最初の一人は間違いなく部屋を見て回るからだ。
それだけにイングウェンザー城のお客様控え室はパーティー会場以上に気を使って内装を考えたものだ。そんなアルフィンから見てもこの部屋は及第点を与える事ができる。奇を衒う事もなく、調度品や部屋の配色、テーブルセットも高価であるだろうけど派手さ控えめに、そこで待つ人が寛げる様配慮されたものがそろっている。
コンコン
内装や調度品を眺めて感心している所にノックの音が響き、扉を開いてこの館のメイドがティーセットとお菓子が乗ったワゴンを押しながら部屋の中に入って来た。そしてそのワゴンを横に移動させると、体をアルフィンたちの正面を向くようにした後に恭しく一礼をする。
「失礼します。お茶をお持ちしました」
残念。もう少し部屋を見ておきたかったのだけど。
こうなると客として持て成される本日の主賓と言う立場にある以上、流石に立ったまま部屋の中を眺め続けると言う訳にも行かない。そこでアルフィンは大人しく自分の席に着き、メイドからお茶のサービスを受けることにする。
「ありがとう、お願いするわね」
私がそう言うと、メイドは私たちの前にお茶とお菓子を置いていく。そしてそれを全員に配り終えた所で、
「それでは部屋の外に控えておりますので、御用の際はお声をかけてください」
と言って出て行った。
う〜ん、普通ここはお客様が一口飲んで感想を言うまでは残るべきだと思うけどなぁ。でもまぁ、地方領主の館に他国の貴賓来賓が来る事はないだろうからそう言うところは教えてないかもしれない。
いや、もしかすると本来なら領主がここに居るはずなので、その時はメイドが感想を受ける事はないはずよね。そうなると、ここで自分たちが主を差し置いてお客様の相手をするべきではないと考えたのかもしれない。と言うより自分たちのような身分の者が貴族である私たちの相手をしたら、返って失礼に当たるとさえ思っていそうよね。だとしたらあの態度も解らない事は無いわ。
「そんな事はないんだけどなぁ」
そう言いながら一口、お茶に口をつける。まず私は手をつけなければ誰も手を出せないだろうからね。ここがイングウェンザー城ならそんな事はないけど、流石に他人の館だからシャイナでさえ私が手をつけるまでは大人しく待ってるし。
「流石にいい茶葉を使ってるわね。でも」
バフや特殊効果は無しか。
ゲームの世界では食べ物や飲み物には必ずと言っていいほど特殊効果が付いてくる。でも、現実の世界では当然そんな物は付かないよね。そこで私が考えたのが、この世界ではどうなんだろうと言う事。普通に考えれば食べ物や飲み物に特殊効果が付くのはおかしい。だってここは私たちの住んでいた所とは違うとは言え一応現実世界なのだから。でも、それと同時に魔法があって武器や防具には魔法の付加が付いているものが存在する。ならば食事関係にも付加が付いてもおかしくはないのでは? とも考えたのよ。
すでにボウドアの村などでの調査で全ての料理に付加が付く訳ではない事は解っている。でもここは領主の館で、そして私たちは他国の支配者と貴族だ。この場合、もし魔法の付加を料理に付ける事が出来るのであれば自国の力を見せる為にも絶対に付けてくるはずなのよ。そうでなければ地方とは言え貴族は貴族。その館で他国の権力者に出すお茶にさえ魔法付加を施せないようでは、言い方は悪いけどこの国の力は所詮この程度なのかと相手に舐められてしまうからね。でもこのお茶には何の付加も掛かっていない。と言う事はこの世界には料理に魔法の付加を与える技術そのものが無いんじゃないかなぁ。
所でもう一つ気になる事がある。それは、
「ねぇアルフィン。このお茶、いい茶葉を使っているのは解るけど甘すぎない?」
「そうなのよねぇ」
そう、シャイナが言う通りお茶に砂糖を入れすぎなのだ。と言うか、最初から砂糖を入れてくるってどういう事なの? 普通はその人の好みに合わせるよう砂糖は別に用意するもので、こんなに大量に砂糖を入れるのはちょっとおかしい。
「アルフィン様、一つ宜しいでしょうか?」
「なに? カルロッテさん。何か気付いた事があるの?」
私たちの様子を見て、カルロッテさんが恐る恐ると言った感じで話しかけてきた。
「気付いた事と申しましょうか、これはこの館の主であるカロッサ子爵様がアルフィン様を精一杯お持て成しなされようと考えての事だと思います」
「砂糖を沢山入れる事がお持て成しなの?」
う〜ん、砂糖を入れすぎるのとお持て成しとが私の中でどうにも繋がらない。どういう事なんだろう?
「はい、同じ調味料でも生きる為に絶対に必要な塩と違い、お砂糖は嗜好品です。それだけに魔法で作られる量も少なく流通量も少ないお砂糖は、この国ではどうしても高級品になってしまうのです。その為、貴族や大商人の間では相手を持て成す場合はこのように」
そう言うとカルロッテさんはお茶の横においてあった皿を持ち上げる。そこにはスコーンのような物に砂糖をシロップで溶いたような物が大量にかけられ、その上なにやら見た事が無いフルーツの砂糖漬が乗っていると言う、一口食べただけで虫歯になりそうなものが乗せられていた。
「お砂糖を大量に使ったお茶やお菓子を出されるのだと思います。」
「なるほど」
そう言えばエルシモさんがこの世界では砂糖は魔法で作られていて高級品だと言っていた。それならサトウキビやテン菜の作り方を領主に伝えたら交渉のカードとして使えるんじゃないかとも考えたっけ。いけないいけない、すっかり忘れていたわ。
まぁこれに関してはギャリソンから止められたんだけど。彼が言うには、そこまでこの世界と違うものを持ち込めば怪しまれるのではないかと言うのが理由らしいけど、言われて見れば確かにその通りなのよね。
「アルフィン様のおかげで普段から甘い物を頂く機会が増えたので今はそうは思いませんが、昔の私でしたらこのお砂糖をたっぷりと使ったお茶とお菓子を出して頂けると言う事は夢のような話なんですよ」
「この大陸の常識では、砂糖を大量に使うのがお持て成しになると言うわけなのね」
なるほどなぁ。でもそれで一つ判った、と言うか納得した事がある。このお菓子、ただ々々甘そうなだけであまりいい香りがしないのよね。多分普通の砂糖を大量に使って作られているだけだからなんだろう。
もし、これと同じ様なものをうちで作ってお客様に出すとしたら砂糖自体をメープル砂糖や黒砂糖、蜂蜜糖等を使ってもっと複雑な味と香りのするものにしていると思うの。でも、この世界では砂糖は精製するのではなく魔法で作るのだから、なんの混じり気も無い砂糖しか作る事ができないんじゃないかな? その結果、このただ甘いだけの物が最高級であり最高のお持て成しのお菓子になってしまっているんだろうね。
「ありがとう、よく解ったわ」
「お役に立てたのであれば幸いです」
私の言葉に微笑むカルロッテさん。うん、色々な意味で参考になったわ。まぁ参考にはなったんだけど・・・、
「さて、問題はこの出されたお茶とお菓子よね」
「うん。こう甘いと流石に、ねぇ」
シャイナと二人でため息を漏らす。ここまで甘いとお茶を飲むだけで口直しのお茶がほしくなるのよね。でも折角出されたものを全員が殆ど口をつけずにいると言う訳にも行かないし。
「しまったなぁ、セルニアを馬車においてくるんじゃなかった」
子供舌で無類の甘党であるセルニアを頭に浮かべ、彼女がいたら喜んで食べてくれただろうにと後悔のため息をつくアルフィンだった。
■
「落ち着きになられましたか?子爵」
「ああ、とりあえずは落ち着いたよ」
リュハネンは感動の涙を流し、跪いて祈りを捧げていた子爵を何とか自室まで連れて行って休ませる事にした。彼は、医者でも無い自分が下手な事をして刺激を与えると錯乱が収まらないかもしれないと考え、静かな所にて子爵自らが落ち着くまでは声をかけずそばに控えている事にしたのである。そしてそのかいあってか、30分ほどでカロッサ子爵は落ち着いたような表情になり、冷静な思考を取り戻したようだった。しかし万が一と言う事もある。また元のように混乱しないよう、彼は刺激しないよう静かに声をかけた。
「一体どうなされたのですか? いきなりあのような。アルフィン姫のお姿に何を見られたのですか?」
「アンドレアスよ、お前の目から見て今の私は冷静か?」
返答ではなく質問で返すカロッサ子爵。その問いに対して冷静に目と顔の表情を観察してからリュハネンは答える。
「はい。私の目から見て、いつもの冷静な子爵に見えます」
「そうか、ではアンドレアスの目から見て今の私は錯乱しているわけではないと見えているのだな。ではもう一度言おう。アルフィン姫は神の御使い。いや、あの方こそこの地上に光臨なされた女神様そのものだ」
先ほど庭で錯乱したかのように叫んだあの言葉。それを今度は冷静な顔、そして静かな口調でカロッサ子爵はリュハネンに告げた。そしてそれはあの時リュハネンが感じたとおり、あの言葉を叫んで時の子爵は錯乱したのではなく、アルフィン姫が女神様であると確信したことに興奮していただけだと言うことを示していた。
「女神様、ですか。それはどのような根拠を持ってそう確信なされたのですか?」
「うむ、そうだな。そこから話さねばお前には伝わらぬだろう」
そう言うとカロッサ子爵は今まで誰にも、そう信頼の置ける筆頭騎士であるリュハネンにさえ話した事が無かった自分のタレントの事を語る。そしてその目で見た帝都の大神官たちの姿と先ほど見たアルフィン姫の姿の事を。
「あの雄雄しく、神々しく、そして慈愛に溢れた眩いばかりの光のに包まれた御姿を見る事ができたのなら、誰もがあの御方を女神様だと信じる事が出来るであろう。しかし、あの御姿を見る事ができるのはこのタレントを生まれ持った私だけだ。おそらくあの御方の従者たちも、いやもしかしたらアルフィン姫様でさえ、御自分がこの地に光臨なされた女神様であると言う事を認識なされていないのかもしれない」
「それほどまで凄いお方なのですか?」
その光り輝くと言う姿を見る事が出来ないリュハネンにはどうもピンと来ない。しかし敬愛するカロッサ子爵がここまで言うのだ。嘘偽りであろうはずも無いと言う事も同時に感じていた。
「アンドレアスよ、そなたに問う。そこに灯る蝋燭の灯火と天にある太陽の輝き、そのどちらが強い光を放っている」
「蝋燭の炎と太陽ですか?」
何を言われたのが一瞬解らず子爵の指差した蜀台の上に灯る蝋燭の光を見つめ、言われた言葉をそのまま返してしまうリュハネン。しかしいくら質問の趣旨が解らないとはいえ、問われた以上答えないわけには行かない。
「当然太陽です。と言うより、その二つでは比べる事自体意味がない程の差があります」
「そうであろう。では帝都の大神官たちとアルフィン姫の光。その二つにそれほどの差があるとしたらどうする?」
この言葉に絶句するリュハネン。まさかそんな。帝都の大神官と言えばこの国で最も力を持つ神官であり、と同時にこの国で一番の信仰系魔法の使い手たちだ。その大神官たちが蝋燭の灯りでアルフィン姫が太陽の輝きならば、あの御方は確かに女神様に匹敵するほどの力を持っていると言う事になる。
しかし驚きと同時に納得している自分もそこに居た。なるほど、かの国は女神様が率いている国であったか。あの極上の料理や酒、最高の環境を提供してくれた客間、そしてあのいか程の価値があるかさえ想像できない程のマジックアイテムと自分の知識の中にはない真っ白な美しい石を使って作られている、輝く大きな大浴場。その全てがこの世のものとは思えない程の物だったが、それでさえあくまで村に置かれた館の、それも別館だと言う話だった。それでは姫が住むというあの城の設備はどれほどのものなのか? もしかすると天上の者たちが住まうと言う場所に迫るほどの生活を送っているのでは? そう考えて思考停止するほどの衝撃を受けたものだが、相手が神であると言うのなら納得も行く。と言うよりも相手が神でもなければ有り得ないだろうと、この話を子爵から聞かされた今ではそう思ってしまうほどだ。
「しかし、これは大変な事になりました。仮にアルフィン姫が女神様ほどの力を御持ちになられているとすると、我々はどのように相対せばいいのでしょう?」
「そうなのだ。相手は女神様、またはそれに匹敵する程の御方だ。これはエル=ニクス皇帝陛下を御迎えする以上に大変な事だぞ」
今頃そんな事を聞かされてもどうしようもない。いや、そもそも時間があったとしても女神様をどう持て成していいかなどと言う、人が経験した事が無い事を考えつけるとも思えなかった。
「ともかくだ。アンドレアス、そなたはアルフィン姫様の館で歓待を受けた事があるのであろう。ではその場所でそなたが受けた事を思い出せ。きっとその場所で行われていた事はアルフィン姫様が日頃御過ごしになられている状況とそれほど変わらないはずだからな」
「はい、確かにその通りです」
そう言って、あの館を思い出す。そして・・・、
「無理です。あの館のレベルの物を御出しする、またはあの館レベルの歓待をするなどと言う事は素材集めなどの準備にかなりの日数を、それこそ30日ほど頂いた上で、なおかつ帝都にある最高級の宿か料理店の筆頭料理人を連れてこない事には到底無理な話です」
「それ程までの物なのか!?」
流石は女神様が住まう場所だ。あんな物は皇帝ですら、そう易々と揃える事は出来ないだろう。
「それに私が体験したのはメイド曰く、『この程度の物しか御出し出来なくて申し訳ありません』という程度の物らしいです。あの時は多少謙遜も入っているのであろうと思っていたのですが、相手がそれほどの御方ならばあの言葉、きっと本当の事だったのでしょう。そうなると例え皇帝陛下であっても、それ程の物を簡単に用意できるとはとても思えません」
「そう言えばそのような報告を受けていたな」
がっくりと肩を落とす主従。
「子爵。思うのですが、ここは無理をせず、ありのままの姿、そしてこちらが出来る精一杯の持て成しで迎える方がいいのではないでしょうか?」
「どういう事だ? アンドレアス」
実際に都市国家イングウェンザーの生活の一端を体験し、その姿を目の当たりにしたリュハネンではどうしたってあの環境を整えるのは無理だと誰よりも理解している。そして今回の子爵の言葉でそのイングウェンザーが神の国である、またはそれに近い国であると伝えられた。ではそんな物を自分たちで用意しようと考えること自体が、そもそも失礼に当たるのではないだろうか?
「子爵、我々は神になることは出来ません。それと同時にアルフィン姫もこちらに神と同等の持て成しをする事を求めているとも思えないのです。ですからあくまで人としてできる事をやるべきではないでしょうか?」
「それがそなたの言う、こちらが出来る精一杯の御持て成しをするという言葉の真意なのだな」
そうなのだ。仮にこちらが無理をして取り繕おうとしたとしてもそれは誠意ではなく見栄だろう。そしてその見栄は相手を不快にするのではないだろうか? 相手が本当に女神様ならばこちらが精一杯の持て成しをしさえすればきっと不快になど感じず、喜んでくださるはずだ。
「はい、それが一番よい対処方法だと私は考えます」
「解った。ではそうしよう。所でそのアルフィン姫様方は今どのように御過ごしなのだ? 私のせいで窮屈な思いをなされているのではないだろうな?」
子爵の言葉を聞いて一瞬顔が青くなるリュハネン。そう言えば子爵の事で頭がいっぱいで今までそちらにまで気が回っていなかった。流石にメイドたちが対応をしているとは思うのだが、早く確認せねば。
そう思い慌ててベルを鳴らし、扉の外で控えていたメイドを部屋に入れて声をかける。
「あの後、アルフィン姫たちはどうなされている?」
「はい、ライスター様、ヨアキム様のお二人のご指示で客間を急遽用意し、お二人の指示に従ってお茶とお菓子をお出ししました」
おおそうか、流石ライスター殿。しっかりと手回しをして・・・っ!?
「おっお茶とお菓子を御出ししたと? まさか、いつものように砂糖たっぷりのお茶とお菓子を御出ししたのか!?」
「あっ!?」
「どうしたのだ、アンドレアス?」
私の言葉である事に気が付いたメイドと、その様子を見て何事かと驚く子爵。しかし今の私はそんな事にかまっていられる心理状態ではなかった。子爵の錯乱と言うあまりの事で気が回らなかったとは言え、これは大変な失態だ。
「まさかこんな事になるとは」
「だからどうしたのだ? アンドレアス」
カロッサ子爵の度重なる呼びかけに、我に返るリュハネン。
いけない。自分の馬鹿さ加減を後悔するのは後回しにして、とにかく今は子爵に事に次第を報告すべきだろう。
「子爵、私はまたも失敗をしました。この事は全てのメイドたちに話しておくべきだったのです。実はボウドアにあるイングウェンザーの館で私は、食事の他にお茶とお菓子を頂きました。そこで知ったのですが、かの国はお茶に最初から砂糖を入れず、訪れた客が自分の好きなだけ入れられるように砂糖壷を別に出すようにしていました。そして同時に出されたお菓子も砂糖をあまり使わず、その変わりに乾燥させた柑橘系フルーツや高価な香料、動物の乳や油等によって極上のものに仕上げられた物を出されたのです。この事から、かの国ではあまり砂糖を高価な物と位置付けて居ないと判断しました。そして菓子に関しては短時間であれだけのものを用意するのは無理と考えて、このメイドには子爵との会談の時にはお茶だけ御出しして一緒に砂糖壷を御付けするように申し付けておいたのですが」
「そうか他のメイドには話していなかったから、いつものように砂糖たっぷりのものを御出ししてしまったと言う訳か」
「申し訳ありません」
普段このメイドとばかり接している為に、他の者にまで告げると言う考えが浮かばなかったのは完全に私の失態だ。
「解った。しかしある意味よかったのではないか?」
「と言いますと?」
カロッサ子爵の言葉を聞いて、その真意が読み取れず首を傾げるリュハネン。
「解らぬか? 先ほどそなたが申したのではないか。見栄を張るのをやめ、ありのままの姿で御持て成しをするのだと。砂糖たっぷりのお茶とお菓子、それこそがいつもの我々の最高の持て成しではなかったか?」
その姿を見てカロッサ子爵は、こう話ながら愉快そうに笑うのだった。
あとがきのような、言い訳のようなもの
主従での女神認定共有完了ですw
まぁリュハネンの場合、この話を聞かされて館での体験を思い出し、おまけにボウドアの館を襲った野盗が金の冒険者を含めた元冒険者ばかり20人と言うとんでもない戦力なのに、それをたった二人で誰も殺さず制圧した事まで知っているのだから神の国と言われたら信じてしまうでしょう。実際は違うんですけどねぇ。
さて、客間で出されたものを全員残したように書いてはいますが、カルロッテだけはお茶は飲み干しています。流石にお菓子の方はスコーンにまで大量の砂糖が使われていた為に完食する事を断念しましたが。
彼女も館や面会所でイングウェンザーのお菓子を食べているので口が肥えてきているんですよね。こんな状態で7年後、本当に普通の生活に戻れるのでしょうか? 無理だろうなぁ。